インドア女子のスペイン生活

都内国立大学を卒業後、就職。2022年7月からスペインに赴任。趣味(読書や漫画)、勉強法、メンタルなどの雑記ブログ。

【感想・レビュー】かがみの孤城

2022年も残すところ、あと数日。

皆さまにとっては、どんな1年だったでしょうか。

 

わたしにとっては、初めての海外生活が始まった激動の1年でした。そうした慣れない生活や、頑張ることに疲れた時、自分の心をフラットに戻してくれるのは、やはり本や漫画などの物語だなと思います。

 

ということで、今回は2018年本屋大賞受賞作『かがみの孤城』の感想レビューを書いてみました。間接的なネタバレ含むので、未読の方はご注意ください。

 

 

1.全体の感想

かがみの孤城』は辻村深月さん作、2017年に刊行された作品です。ミステリーとしても、心温まるヒューマンドラマとしても楽しめる、辻村さんならではの作品だと思います。辻村ワールドにハマったことのある方なら、お分かりいただけると思いますが、彼女の作品をいくつ読んでも、最後ははっと息を呑み、涙がこぼれる感覚がわたしは大好きです。読んだ後の心温まる感覚と救われた想いは、辻村さんの作品全般に通ずるものですよね。

中でも本作は、周囲の世界に溶け込めない子どもたち、かつてそのような子どもだった大人たち、そのひとりひとりに宛てられた願いの手紙のように感じました。

 

日々生きていると、自分の周りにある世界だけがすべてのように思えてしまう瞬間はあると思うのです。そして、どんなに友だちが多くても、家族と仲が良くても、孤独を感じる瞬間は巡ってきて、自分を分かって受け入れてくれる人は、この世界にいないのではないかと感じてしまう。

実際には、世界は広くて、学校だけが、目の前にある現実だけがすべてじゃない。たとえ明日から生きていく現実はそう簡単に変わらなくても、そう思えれば救われることもある。

そして、日々自分が闘っていることを分かってくれる、または分かろうとしてくれる人がいれば、それだけで生きていける、少し強くなれる。

 

大学生になり、社会人になり、世界の広さを知ったところで、今度は逆に身の振り方が分からなくなるかもしれない。途方もない道程に心が挫ける時もある。この人なら分かってくれると思える人も、今はまだいないかもしれない。

 

それでも、きっと。

未来で誰かがあなたを待っているから。

だから、生きて、頑張って大人になって、というメッセージがひしひしと伝わってくるラストでした。

 

2.オオカミさまについて

主人公こころを含む、7人の中学生をかがみの中のお城へ招いた小さな女の子、オオカミさま。

その謎に包まれた正体や、彼女のセリフ1つ1つの意味など、ミステリー作品としても楽しめる部分は多いですね。

彼女の正体を知った上で、作品を読み直すとさらに泣けます。

 

小さな女の子の、シンプルで優しい願い。その願いが星のように繋がっていく。

 

どの物語においても、願いを叶えるためには大抵の場合、代償が必要です。オオカミさまの願いにもいろんな制約がかかっているように読めます。

顔を面で隠し、正体を明かさず、誰かの願いが叶えば、オオカミさまも城も、皆の記憶には残らない。

だから、理音の「覚えていたいよ」という言葉に彼女は救われたんじゃないかなと思います。彼女の気付いてほしいという心の声に、理音は応えてくれた。愛故に、です。

 

3.最後に

この本は発売当時に読んだ時から忘れられない大切な本です。当時、筆者は大学生で、幼い頃の自分とこころを重ねて読んでいたのですが、今回はオオカミさまに感情移入して読んでいました。

何度読んでも新たな発見があり、辻村さんらしい優しさと救いに溢れた本だと思います。なんとなく自分の居場所がない時、未来に希望が持てない時、ぜひ手に取ってみてください。

 

2023年が皆さまにとって素晴らしい1年となりますように。

 

2022.12.30 紅葉

 

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